虻蜂取らずとは?意味をわかりやすく解説
「虻蜂取らず(あぶはちとらず)」は、二つのものを同時に手に入れようとして、結局どちらも得られないことを意味することわざです。
欲張って複数のことに手を出すと、中途半端になってしまう——そんな戒めが込められています。日常会話からビジネスの場面まで幅広く使われる表現なので、正しい意味と使い方を押さえておきましょう。
虻蜂取らずの読み方と基本的な意味
読み方は「あぶはちとらず」です。漢字だけ見ると難しそうですが、口にすればなじみのある響きではないでしょうか。
意味を一言でまとめると、「二つのものを欲張った結果、どちらも手に入らなくなること」です。もともとは「虻も取らず蜂も取らず」というフレーズが短くなった形だとされています。

「あれもこれも」と手を広げすぎて、全部ダメになった……そんな場面にぴったりのことわざですね。
虻蜂取らずが伝える教訓
このことわざが伝えているのは、欲張りすぎず、一つのことに集中する大切さです。
選択肢が多い時代だからこそ、あれもこれもと手を出したくなるもの。しかし、どちらも中途半端に終わるくらいなら、まずは一つに絞るほうが確実に成果を得られます。昔の人がクモの行動から導き出した知恵は、現代でも十分に通用する教訓といえるでしょう。
虻蜂取らずは「欲張ると何も得られない」という戒めのことわざ。まずは優先順位をつけることが大切です。
虻蜂取らずの由来と語源


虻蜂取らずの由来は、クモが獲物を捕まえそこねたエピソードにあります。意味だけでなく背景を知ると、ことわざへの理解がぐっと深まります。
蜘蛛が虻と蜂の両方を逃がした逸話
あるクモが巣を張って獲物を待っていました。すると、まず虻(あぶ)がクモの巣にかかります。クモが虻を取りに向かったところ、今度は蜂もクモの巣に引っかかりました。
「蜂も捕まえたい」と考えたクモは、虻を放って蜂のほうへ向かいます。ところが、その隙に虻が暴れて逃げ出そうとします。あわてて虻に戻ると、今度は蜂が逃げようとする——。
こうしてクモはあちこち行ったり来たりするうちに、虻にも蜂にも逃げられてしまいました。結局どちらも捕まえられなかったのです。
「虻も取らず蜂も取らず」が短縮された経緯
もともとは「虻も取らず蜂も取らず」という言い回しでした。これが日常的に使われるうちに短くなり、「虻蜂取らず」という四字のかたちで定着したとされています。
江戸時代のことわざ集にも収録されており、古くから庶民の間で親しまれてきた表現であることがうかがえます。
虻蜂取らずの使い方と例文
虻蜂取らずは、日常生活でもビジネスの場面でも使える便利なことわざです。ここでは具体的な例文を通じて、自然な使い方を確認していきましょう。
日常生活での使い方・例文
- ピアノとギターを同時に始めたが、どちらも上達しない。まさに虻蜂取らずだ。
- セール品を片っ端からカゴに入れた結果、予算オーバーで何も買えなかった。虻蜂取らずとはこのことだ。
- 受験勉強と部活の両立を欲張りすぎて、虻蜂取らずにならないよう気をつけよう。
ビジネスシーンでの使い方・例文
- A社とB社の両方から契約を取ろうとして、虻蜂取らずに終わってしまった。
- 新規事業と既存事業に同じリソースを割くのは、虻蜂取らずになりかねない。
- ターゲットを絞らないマーケティングは、虻蜂取らずの典型です。
使う際の注意点
虻蜂取らずは「失敗した結果」や「失敗しそうな状況」に対して使うことわざです。成功している場面には当てはまりません。
- 二つのことを同時に追いかけて失敗した(しそうな)場面で使う
- 自分への戒めとしても、相手への忠告としても使える
- 目上の人に直接使うとやや失礼になる場合があるので注意
虻蜂取らずの類語・似たことわざ
虻蜂取らずと同じ教訓を持つことわざは、ほかにもいくつかあります。それぞれのニュアンスの違いを見てみましょう。
二兎を追う者は一兎をも得ず
最もよく知られた類語がこの「二兎を追う者は一兎をも得ず」です。西洋由来のことわざで、二羽のウサギを同時に追いかけると一羽も捕まえられないという意味を持ちます。
虻蜂取らずとほぼ同じ意味ですが、違いを挙げるなら、虻蜂取らずは「結果として両方失った」という点に重きがあるのに対し、二兎を追う者は「追いかける行為そのもの」への戒めというニュアンスがやや強い点でしょう。


花も折らず実も取らず
花を折ることも実を取ることもしないまま終わる、つまり何の成果も得られないという意味です。虻蜂取らずと同様に「どちらも手に入らない」ことを表していますが、やや文語的な響きがあります。
欲は身を失う・多欲は無欲に似たり
「欲は身を失う」は、欲張りすぎると身を滅ぼすという意味です。「多欲は無欲に似たり」は、欲が多すぎると結局何も手に入らず、欲がないのと同じだという教えになります。
虻蜂取らずが「二つの選択肢」にフォーカスしているのに対し、これらはより広く「欲望そのもの」への戒めとなっている点が異なります。
虻蜂取らずの対義語
「二つとも失う」虻蜂取らずの反対は、「二つとも得る」ことを意味する表現です。代表的な対義語を見ていきましょう。
一石二鳥
一つの石を投げて二羽の鳥を同時に仕留めるという意味のことわざです。一つの行動で二つの成果を得ることを指し、英語の「Kill two birds with one stone」がもとになっています。
虻蜂取らずとは正反対で、効率よく複数の成果を上げるポジティブな場面で使われます。
一挙両得
一つの行動で二つの利益を得ること。意味は一石二鳥とほぼ同じですが、一挙両得のほうがややフォーマルな印象があり、ビジネス文書でも使いやすい表現です。


虻蜂取らずの英語表現
虻蜂取らずの考え方は日本だけでなく、英語圏にも似た表現があります。海外の人に説明するときの参考にしてみてください。
“Between two stools you fall to the ground” ほか
英語で虻蜂取らずに最も近い表現は以下のとおりです。
| 英語表現 | 直訳 | ニュアンス |
|---|---|---|
| Between two stools one falls to the ground | 二つの椅子の間で地面に落ちる | どちらにも座れず失敗する |
| Grasp all, lose all | すべてをつかもうとすれば、すべてを失う | 欲張りへの戒め |
| Fall between two stools | 二つの椅子の間に落ちる | 上記の短縮形。日常会話向き |
また、類語の「二兎を追う者は一兎をも得ず」に対応する英語は「If you run after two hares, you will catch neither」です。あわせて覚えておくと便利でしょう。
まとめ
虻蜂取らず(あぶはちとらず)は、二つのものを同時に手に入れようとして、結局どちらも得られないという意味のことわざです。
- 意味:二つを欲張って両方とも失うこと
- 由来:蜘蛛が虻と蜂の両方を捕まえようとして逃がした逸話
- 類語:「二兎を追う者は一兎をも得ず」「花も折らず実も取らず」など
- 対義語:「一石二鳥」「一挙両得」
- 英語:「Grasp all, lose all」「Between two stools you fall to the ground」
やりたいことが複数あるときこそ、虻蜂取らずにならないよう優先順位をしっかり決めることが大切です。まずは一つに集中して、着実に成果をつかんでいきましょう。






